brownish areaとmetallic silver signはともに咽頭・食道領域におけるNBI(narrow band imaging)観察における病巣を表現する用語である.
上部消化管内視鏡においてNBI観察では,“brownish area(褐色の領域)”としての病巣を拾い上げることができる(Fig. 1)1).
brownish areaとして関心領域を拾い上げると,同部をNBIのまま拡大観察を行う.
このときbrownish areaの中に異常血管(IPCL-IV,V)を確認できれば,癌を強く疑う.
褐色調の色調は,「異常血管(IPCL-IV,V)」と「血管間に介在するbackground coloration sign(BC sign)陽性」の2つのファクターより構成される.
NBI拡大内視鏡診断に当たっては,brownish area内の「異常血管(IPCL-IV,V)の増生」が最も重要であり,
その所見に加えて,さらにBC sign陽性を認めると癌の可能性が高まる.
metallic silver signは,ヨード染色におけるピンクカラーサイン(Shimizuら)2)のNBI観察における所見である.
ピンクカラーサインは扁平上皮癌に特異的な所見であるが,NBIで観察するとよりコントラスト高く観察することができる.
metallic silver signが最も役立つのは,まだら食道における癌病巣の拾い上げにおいてである3).
アルコール多飲の患者では,粘膜癌の拾い上げに際してNBI観察を行っても,明瞭なbrownish areaが観察されないこと,
あるいは不規則,あいまいに広範囲に出現することも多い.
そのような病変では,まずは従来から行われているヨード染色を行うと多数の不染帯(このような不明瞭な不染帯を淡染と呼ぶことも多い)が描出される4)5).
それらは,ほとんどが低度,高度の上皮内腫瘍に一致する.このヨード不染帯のなかにピンクカラーサインを認めると,粘膜癌を疑う.
このピンクカラーサインを高コントラストで強調させる方法が,metallic silver signである(Fig. 2).